英国医学研究留学記

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'opt out' organ donor consultation

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ここのところ天気が悪いです。と云うよりも、いつものロンドンに戻ってしまったと言う方が正しいかもしれません。曇って時々冷たい雨がしとしとと降ってきます。

今朝のBBCニュースのトップは何と言ってもマイケル・ジャクソンの主治医だったコンラッド・マレー氏に陪審員全員一致で有罪との判決が下った事でした。
ブログでは、それとは違って別のニュースを取り上げます。医療関係のネタが続いていますが、今日も我々にはちょっと重たい話ですが英国での医療の話を。

脳死移植と云うのは、未だに移植がされるたびにマスコミがニュースにする状況を鑑みると、日本ではまだまだ定着したとは云いがたいかもしれませんが、海外(特に日本を除く先進国)ではニュースにすらならない、ごく当たり前の治療オプションとして定着しています。移植でしか助からない疾患/患者さんが対象に成る訳ですが、世界的に我々が直面している問題は、圧倒的な「ドナー臓器の不足」です。以前に僕のブログで、先々、日本に在住する(英国在住ではない)日本人が英国へ渡って移植を受ける道は閉ざされるだろうと云う記事を書きました(「ドナー不足」参照)。WHOが「移植の臓器は、基本は自国で調達すべし」という勧告を既に出していますから、他国で移植を受ける可能性は、年々難しくなって行くであろう事も容易に想像できます。この根底にある問題も、ドナー不足です。自国で生じるドナー臓器を、どうして外国人にまわさないと行けないのかと云う批判が有る訳です(これには、お金持ちが物価の安い国へあたかも臓器売買かのように移植を受けにやってくる事への批判も含まれるでしょう)。

今日のニュースによると、ウェールズでは、脳死に至った患者さんが生じた場合、「本人が生前に臓器を提供したくない」という意思表示をしていなければ、その臓器は残された家族が反対しようが移植に供する、という法案が検討されています。
Welsh government's 'opt out' organ donor consultation
従来は、本人が「移植に使ってください」という意思表示をしていた場合を除いては家族の承諾を得ていたのですが、一般市民の移植の必要性への理解と意識は日本と違って非常に高いものの、臓器提供の意思表示が思ったように数がのびないため、「移植します」というポジティブな意思表示の方法を止め、「移植には提供しません」というネガティブな意思表示を基本とする事に変更しようと言う訳です。この法案が通ると、英国内では初の試みとなりますが、試算するとウェールズではいまよりも提供臓器の数が増え、かつ、本人が拒否の意思表示をしていなかった場合には残された家族には法的に反対する権利は全く認められなくなります。

先日、遮断鉗子さんのブログで、渡航に拠る脳死心臓移植に関わる考えさせられる記事が有りましたが(「心移植 悲喜交交 ~心臓移植で引き継がれる命と失われる心~」参照)、今日のBBCのニュースを見て、改めて、日本の社会が日本はどうあるべきか、逃げずに考えないと行けないと思いました。移植臓器が世界的に不足する中、日本では(特に小さい子供たちには)なかなかチャンスが無い現状から渡航移植を受ける日本人は後を絶ちませんが(それが悪いと云っている訳ではないですので、念のため)、見方を変えると、それを快く思っていない海外の人たちがたくさん居るであろう事も想像に難く有りません。なぜなら、我々日本人が来なければ、その国の国民の他の患者さんが移植を受けることが出来たかもしれないからです。しつこくなりますが、将来的に、日本人が渡航移植を受けるチャンスは無くなって行くと思われます。

移植医療はもちろん決してバラ色とは云えないのですが、日本ではどうして一番の弱者である患者さんの視点で未だに話が進まないのか、不思議に思います。最近になって日本では、法整備上、子供たちに「法的には移植の道が開かれ」ましたが、形の上だけに見えます。実際のところ、じゃあ6歳未満のお子さんが移植を受けれるチャンスがあるかと云うと、現状ではほぼゼロでしょう。現実的にどうやって行うかという策が無いに等しいのですね。じゃあなんとかしようとして、たとえばウェールズのような法案を出そうとしたら、方々から叩かれ、マスコミも大騒ぎして大変なことになりませんか?(この法案が良いとは云いませんけど)。これは僕が「医師だから通常の感覚や常識を失ってしまっているから」、そう思うのでしょうか?政治や経済の問題のように、合議制のもと、先送りを続けているだけだとしたら、そうしている間にも、なす術無く(技術的に助かることの出来た)患者さんがお亡くなりになっている事実を認識しないと行けません。弱者の視点で議論を尽くして、日本の社会が「それもやむなし」と云う結論ならば、致し方のないことですが、個人的にはもしそうならば残念に思います。

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テーマ:雑記 - ジャンル:日記

  1. 2011/11/08(火) 17:31:35|
  2. 英国
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:2
<<119番の日 | ホーム | heart unit closure~続報~>>

コメント

本来、ここでコメントすべきなのですが。長くなりそうだったので、自分のブログでトラックバックさせて頂いた上で記事を書かさせて頂きました。勝手にごめんなさい!!
  1. 2011/11/11(金) 21:30:51 |
  2. URL |
  3. 遮断鉗子 #-
  4. [ 編集]

遮断鉗子さん

コメントとトラックバック、ありがとうございました。全然、大丈夫ですよ。そう、お気を使わずに。とにかくも、体裁だけ整えてポーズだけやっているように見せかけるの、止めてほしいですよね。「偽善」と云われても仕方が無いかも知れません。このまま行けば、先々、「英語の壁を取っ払って海外に逃げ出す」組と、「我慢してでの良いから日本にいます」という組にまっぷたつに分かれて行くのかも知れませんね。まあ、今は圧倒的に日本が便利ですけど(暮らし良い国かどうかは、別問題ですが。自殺者数を見ても、決して暮らし良い国とは云えない気もしますが)。
  1. 2011/11/11(金) 22:46:29 |
  2. URL |
  3. Dr Ken #-
  4. [ 編集]

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心移植で助かる命を助けない理由を問う

リンクをはらせて頂いているDr. kenさんのブログ英国医学研究留学記に非常に考えさせられる記事があってこの数日あれやこれや考えていた。本来、Dr.kenさんのブログにコメントすべきだろうけど、長くなりそう...
  1. 2011/11/12(土) 06:38:43 |
  2. 小児心臓外科 ドイツ留学徒然草

プロフィール

Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

当ブログの写真および記事とは直接関係がないと判断したコメントやトラックバックは、申し訳ありませんが削除させていただきます。ご了承ください。

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