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英国医学研究留学記

Verval & Non-verbal

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まったくもって、ここのところ冷え込む日が続いています。今日明日の最高気温は13℃程度ですが、日曜日には19℃まで上がるらしく、こうも高低が激しいと、体調管理が大変です。どうせならば冷えたなら冷えたままで居てほしい、そう思ってしまいます。

日本の新聞でも取り上げられていましたが、natureの電子版に掲載された知能指数(IQ)に関わるこの論文が「英国でされた研究で英国の雑誌に掲載された」ことに、ちょっと興味を引きました。
Verbal and non-verbal intelligence changes in the teenage brain

従来は、個人個人の持つIQは生涯を通じ比較的安定した数値を示し、どこかの一点で測定されたIQは、その後の学習の達成度やどのような職種に就けるかの予測に使われていました。ところが、ロンドン大UCLの研究チームが中心となって行われたこの研究に因ると、IQそのものは、言語性/非言語性(verbal or non-verbal)を問わず、かなり揺らぐことが分かり、特に10台に於いて、とてものびる子も居れば、逆に落ちて行ってしまう子も居る事が判明したとの事。このIQの上下には、脳の構造的変化と非常に密接な関係があり、若年時に於けるある一定の水準以上のIQをもつ人物のIQ値の高低は、あまり将来の知的活動のパフォーマンスを反映しない可能性があると論文中で議論されています。

なんで、英国からこのような研究結果が出た事に興味を覚えたかと云うと、この国のsecondary schoolの入学試験(10歳児が対象です)においては、特に進学校で知能テストに相当する二つのテスト、すなわちVerval reasoningのテスト(言語的推論;言語的なひらめきを試すテスト)とNon-verbal reasoningのテスト(非言語的推論;図形や記号などによる直感力を試すテスト)が、とても重要視されているからです。学校の説明会などへ行くと、校長先生がスピーチで、「我が校に合格したければ、まずはVerbalおよびNon-verbal resoningを鍛えなさい。このテストの高得点者が、先々、知的活動や創造的活動に於いて高いパフォーマンスを発揮すると云うはっきりとした科学的データがあるので、われわれはまず一次試験でこの2つの高得点者を選抜するのです。」などと云う説明をするくらいですから。そう校長先生が説明する科学的データや論文を僕自身が検索して調べたり読んで検証したりした訳ではないのですが、今回のこのnatureの論文は、英国内のこういった昨今の入学試験のあり方に、見方を変えると一石を投じているように感じた訳です。この国の教育システムでは、secondary schoolでいわゆる進学校へ進学できなかった者は、はっきり言ってしまえば「高等教育(つまり大学)への進学のチャンスは、ほぼ無くなる」といっても、あながち間違っていないと思います。言い換えると、10歳の時点で、高等教育を受けるべき児童と、それは必要無いでしょうと云うレッテルを貼られてしまう児童が選別されてしまうと云う事です。もちろん入試は、VervalとNon-verbal resoningだけで決まる訳ではなく、一次試験を通過した児童たちがさらに二次試験で普通は算数と英語の二教科の試験で最終的に選抜されます。したがって、いわゆるIQらしいスコアのみでそういった「差別化」が測られる訳ではないのですが、今回のこの論文は10歳と云う年齢でそのような振り分けをしてしまって良いのか?という事に、個人的には疑問を感じてしまいました。ちなみに、英国では、入った学校によって与えられる教育の中身は雲泥の差なので、進学校ではない学校へ入学し、しかもそこから転校もしなかった場合は、いくら個人が能力があろうともおそらく高等教育へのチャンスはもう無いと思われます。

自分の経験を振り返ってみるに、中学で伸びる子もいれば、中学では良かったのに高校で成績を落とす子も居ますし、逆に中学の時はそれほどでもなかった子が高校で飛躍的に成績が上がる子も居ますから、やっぱりどの年齢層に於いても、良いパフォーマンスを発揮した者には平等にチャンスがある様な仕組みが良いですよね。その点、日本は(閉鎖的でグローバル化からはほど遠いですが)機会の平等さと云う点に於いては、良いんじゃないかなぁと感じました。ちなみに、昨今、高所得者のご子息がいわゆる一流と言われている大学への進学の可能性が高いと日本で報じられるようになって久しいですが、それは米国でも英国でも全く同じです。

テーマ:雑記 - ジャンル:日記

  1. 2011/10/21(金) 16:53:56|
  2. 英国
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

こんばんわ~

さすがは高緯度のロンドンv-501
この時期が一番日本とのちがいが大きいかも
樹の色づきも秋らしさがありますし...何といっても青空がちょっと冬っぽい感じがします
  1. 2011/10/22(土) 12:18:51 |
  2. URL |
  3. yo #vYXebdWU
  4. [ 編集]

Re: こんばんわ~

yoさん
そうですねぇ。日本人的な感覚からすると、もう立派な冬ですね、ここ数日のロンドンは。
天気予報によると、日曜日から数日は気温が若干上がって20℃くらいの気温になるらしいですが、噂ではそのあとに雪が降るかもしれないとのこと。
ここの天気は、本当に油断がなりません。
空の「抜けの良さ」は、見ていて気持ちがいいですよ。
  1. 2011/10/22(土) 22:11:47 |
  2. URL |
  3. Dr Ken #-
  4. [ 編集]

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Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

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