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英国医学研究留学記

新聞の科学欄

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今日は、曇り空で俄雨が時々降るというぐずついた一日でした。
冷え込みかたは昨日よりもやや穏やかな気温でした。

本日の夕刊、London Evening Standard誌に、昨日紹介したGreat Ormond Street Hospital for Childrenが大きく取り上げられていました。ガレン大静脈異常と言う先天性の脳の血管の奇形の病気に、Great Ormond Street Hospital for Childrenで2003年度から取り組んでいた新しい治療法により合併症も無く元気になった子供さんのことがまるまる1ページを割いて紹介されていました。この奇形、脳の特定の場所の動脈と静脈の連絡がおかしくなっていることが本態なのですが、いくつかのタイプに分類されていて、病型に拠っては放置されると生後2~3日しか生存できません。従来は手術か、もしくはカテーテルで動脈瘤をつめるのと同じ様にコイルを留置して血管の異常な連結部位を断つのですが、この病院では瞬間接着剤に近い直ぐに固まる合成樹脂を利用する方法を使っているのだそうです。

小児病院に勤めている日本人の医師には「それがそんなに画期的かいな?」と思われるかもしれませんが、僕が云いたかったのは、こちらの新聞には科学欄(それも日本の新聞にありがちな日曜版だけそういうコーナーが有ってと言う事ではなくて、平日の紙面内に毎日とは言いませんがキチンと科学欄が有るのです)に日常的に医学の進歩や科学上の業績が紹介されていると言うことなのです。それも、とても噛み砕いた表現で書かれているので、例えば宇宙物理や量子力学の話なんかでも、専門外の僕にもある程度イメージできるような切り口で書かれています。このあたりも、日本では研究は趣味人的行為と見なされ市民からはあまり重要視されていないかの様に見える国と、科学の進歩を歓迎し皆でそれを支えようとする国の違いと言えるのかもしれません。要するに、科学は市民とは乖離した浮世離れした所に有るのではなくて、距離的に近い物と捉えられる所以なのかもしれません。

日本ではNatureやScience(生命科学だとこれにCellと言う雑誌を加えて「御三家」と呼ばれ、もっとも成功した業績と見られます)クラスに載った業績しか、新聞ではまず紹介されませんが(もちろん、例外もあって、政治力のある研究者や医学部の教授が、自ら新聞社に売り込んだに違いないと思わざるを得ないものもあります)、こちらではそんなことはありません。何が違うのか?僕は、多分新聞記者の勉強の度合いや知識量、更に言えば記者および新聞社の使命感だと思うのです。Nature、Cell、Scienceに掲載された仕事は、誰でもインパクトのある仕事だと判る訳ですから、記事を書く方もネタとして安心です。逆に言うと、これは新聞記者がネタを探す行為を怠り「思考停止」しているに近いのでは?と、こちらの新聞記事を見るに付け思う様になりました。要するに記事そのものが「インスタント」でありファーストフードと同じモノだと言う訳です。もう一点違う点は、すべての記事に記者の署名が入っているところです。誰が書いたのか、責任の所在がはっきりしている訳です。日本の新聞記事の何割が署名記事でしょうか?
新聞業界の事を知っている訳ではないので、このことだけで英国のマスメディアは日本と比べてスバラシイとは言えませんが、少なくとも今の日本の新聞報道のあり方は、新聞までもが「週刊誌化」してしまっている様に僕には映ります。もちろん心ある記者さん・新聞社の職員さんもいらっしゃるでしょうから全部がそうだとも言いませんが、総論としてはそういった風潮は否定できない気がするのです。

テーマ:雑記 - ジャンル:日記

  1. 2009/12/02(水) 20:45:47|
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Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

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