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英国医学研究留学記

泥仕合?

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今日はよい天気でした。気温も25℃前後あり、快適です。ドンドン日が短くなって来ているのが体感できるので、ロンドンの良い季節もあとちょっとと思うと、寂しい気になります。

ここのところ医療系のニュースが続いています。
一つ目は、今朝のBBC Breakfastで、英国では豚インフルエンザのワクチンを10月から供給を開始すると政府が発表したそうです。ひとまず生後6ヶ月から65歳までの人で、喘息などの何らかのリスクファクターのある人や妊婦さんなど、優先的に接種を受けることの出来るクライテリアも設けられています。

二つ目の話題は、ここ数日、医療関係で米国に端を発した英国NHSに関する「口撃」と「応酬」が何かと話題になっています(日本ではあまりニュースのなっていないようですが)。

米国の医療システムは基本は自己責任で、病院で医療サービスを受けるための保険に個人が入る前提となります。それゆえ、入っている保険に拠っては最適な治療法を受けることが出来なかったりしますし、保険に入る事さえ出来ない人が470万人、保険としては十分ではないものにし入ることが出来ない人がさらに250万人いるとされています。そのため、Obama政権は医療制度改革を押し進めていて、その模範の一つに英国のNHSを挙げていました(何でNHSなんでしょう?以前から僕はNHSには良いところもあるけども問題も多いと言って来ました。ここで「日本」が登場しないのは、ちょっと残念。まあ、日本も問題が多いですが、英国よりはましかなあ.....)。

この政策に対して、Obama医療改革へ反対のキャンペーンを張る人たちが、英国NHSは"Orwellian(全体主義的)"で"evil(有害)"だとこき下ろしています。それに加えて、英国の保守党欧州議会議員のDaniel Hannan(このひとは前からNHSの仕組みは良くないので、解体して別の制度にすべきとの信条の持ち主なんだそうです)が、先日米国のTVで英国のNHSの事を最悪の仕組みとこき下ろすなどしたために、英国首相のGordon BrownがTwitterを利用して反撃に出るなど、ちょっと面白い展開になって来ました。米国では市民レベルでも医療制度改革に対して賛否両論、けんけんがくがくの議論になっている事がBBCでも報じられています(どちらかと言うと、反対の人の発言が目立っている気がしますが)。あのSarah Palinまでが登場して、NHSを模したObamaの医療改革は"downright evil"とか発言していますが、このひとはきちんと英国の仕組みを理解した上で発言しているのか、微妙ですね~(発言聞いている限り、あまり賢い人とは思いません)。保守党内部からは米国のTVで英国の仕組みを悪く言ったHannanに対して、"unpatriotic(直訳は「愛国心が無い」ですが、文脈的にニュアンスとしては「売国奴」と言った方が近いかもしれませんね)"と批判が出たり(こうなると感情論ですね。もっとも、自国の事を悪く言われれば、誰だって気が悪いですよね)、医療改革そのものがどうなるのかも興味深いですが、米国と英国間での応酬もどうなって行くのか、個人的に興味津々です。

写真は、Regent streetで信号待ちをしているSightseeing Busです。夏休み中とあって、乗っている人も多いです。

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2009/08/14(金) 18:43:16|
  2. 英国
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

医療制度も年金制度も、すでにある程度の期間はしってきた現行制度を変えるというのは、なかなか難しいものですね。日本人はコンサバなところが強い気がして、仕事などでも前任者のやり方をなかなか変えようとはしないものです。そういう慣習、感情的なものを断ち切って、大きな制度をガラッと変えるのは相当なパワーがいりますし。小泉元総理が天命として断行した郵政民営化、私は郵便局はあまり使わないので、なにがどう変わったのかいまいち明るくないですが、あのすったもんだは忘れません。

オープンエアーの二階建てSightseeing Bus、乗りました。懐かしいです。
  1. 2009/08/15(土) 09:03:51 |
  2. URL |
  3. kk #z1uogJ6Q
  4. [ 編集]

kkさん
おっしゃる通りですね。日本人は大きな変革を嫌いますね。日本史上、革命もありませんでしたし(明治維新は武士に拠る変革で、身分がひっくり返る社会変革ではないので、革命とは言えません)。

しかしながら、国民全体が今のままで良いとは思っていないでしょうから、少しずつでも変わって行くのではないかと予想しています。
  1. 2009/08/15(土) 19:40:43 |
  2. URL |
  3. Dr Ken #HfMzn2gY
  4. [ 編集]

日本でも豚インフルエンザに感染する人が増えてきていますね。
これから寒くなっていってまたパニックになったら困るなぁと思っています。
↓医師会。。。そうなんですね。
なにも知らない私だとそのまま受け止めてしまってました。なかなか切実な勤務医の方のお話だったと思います。
この前、小児科センターのPCと沢山の一般家庭のPCと繋げてお薬の研究、開発をする(本当はちょっと違うかもしれませんが、私はそう受け入れています、間違っていたらごめんなさいね)というニュースを見ました。
国も製薬会社も小児科のお薬の開発、研究にはなかなか力を貸して貰えない(費用面でも研究面でも)と仰っていました。

英国のロンドンなら2階建てバス!
高校生の時、文通相手だったアマンダに会いに行ったら乗りたいって思ってましたね~。
  1. 2009/08/17(月) 12:12:21 |
  2. URL |
  3. kaotti1 #Oob10Koc
  4. [ 編集]

kaotti1さん
豚インフルエンザで日本でもとうとう死亡例が出現しましたが、やはり基礎疾患を患っていた方のようですし慌てない事ですね。季節性インフルエンザで毎年死亡している人数をちょっと調べていただければ、心配する必要なんて無いと気づいていただけるのではないかと思います。マスコミには、うんざりですね。もっと毎年の季節性インフルエンザが流行しているときに、如何に多くの方が亡くなっているかを報道し、ワクチンの摂取率を上げるとか、政府に対策を迫るような記事を今まで書いたことがあるでしょうか?。僕は見たことがありません。

医師会は、そういう団体です。勤務医は加入しても医療事故時の医師会の医師保険に加入できるくらいしかメリットがありません、はっきり言って。もし、今の状況で医師会が医師不足でどうのこうのと同情を誘うようなCMを本当にしているなら、ぼくは「ふざけるな」と思います。

小児医療に関する手続きは、本当に後回しにされるケースが多く、小児科医としては本当に腹が立ちます。子供たちは将来の労働力で日本のGDPを支えるべき人材ですから、大切にしないといけないはずなのに....。一方で、バイアグラが超ハイスピードで認可されたりする訳ですから飽きれます。政治家も官僚も(多分自分たちが老いて来ていますから)目先の事(つまりこれからの自分たちに関わりのある事)ばっかりで、10年20年先の「国の行く末」なんて全く見据えていないのだなと思います。
  1. 2009/08/17(月) 21:10:33 |
  2. URL |
  3. Dr Ken #HfMzn2gY
  4. [ 編集]

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Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

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