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英国医学研究留学記

医学応用

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昨日は暑かったですが、今日もさらに暑い(でも最高は30℃ほどです)。
何気なくNature Medicineのon line版を眺めていたら、ちょっと目に留まった記事がありました。
News
Nature Medicine 14, 697 (2008) "Harvard turns to matchmaking to speed translational research"

「Translational Research」という言葉が良く耳にされる様になって久しいとは思いますが、言葉としてはこの10年くらいのものだと思います。
でも、元医師からすると、基礎研究で明らかになったエビデンスを、病気に苦しむ人の治療に応用できないのかとの試みは従来から脈々とされ続けて来た事ですから、あらたまってそんな特殊な扱いをする事なんか無いと正直思っていました。
しかしながら、当節の流行と言いますか、日本も含めて各国でこういった領域が国策として重要視され、研究者同士の間での競争も激しいことは間違いない事だと思います。
でも、この記事を見て、これは日本はこういった領域で世界をリードするのは容易でないな、と強く思ったのでした。
そう思った理由は、僕のブログは匿名のブログなので無責任は批判はしたくないので僕の意見の詳述は避けますが、スピード、予算の大きさ、そして直ぐにコラボレーションが生まれる下地に予算配分の決定過程を含む研究をサポートする社会の仕組みです。
論文発表でも学会発表でもなくて、大学の中で行われていたミーティングに端を発して、この記事に書いてある様なスピードで予算がついて大きな展開を見せる事等、少なくとも僕が見て来た日本のアカデミックな(営利企業ではない)研究畑では100%あり得ません。
山中伸弥先生のiPS細胞(場合に因ってはノーベル賞級の成果)でも、昨年末からのあのような大きなムーブメントが生じるのに最初のCellに発表した論文から1年半ほど(論文以前の学会もしくは研究会レベルでの発表からするとおそらく2年くらい)を要していますから、これは日本の科学行政に携わるえらい人たちには相当危機感を持ってもらわないと苦しいのではないかなと感じました。
ブレイクスルーが誰の目に見ても明らかになってから動き始めたのでは、ブレイクする前にその兆候を捉えて手厚いサポートをしようとしている様に見える海外のシステムの前には、どうにも太刀打ち出来ない様に思えるからです。
あまりゲノムプロジェクトでの苦い経験が生かされていない様な気がします。

テーマ:自然科学 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2008/07/28(月) 07:17:56|
  2. 研究
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Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

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