fc2ブログ

英国医学研究留学記

死を受け入れると云う道

R0010850.jpg
GRD2 ISO400 f2.4 1/13s
2日前に、日本人にはちょっとショックを感じる様なニュースが流れました。
http://ap.google.com/article/ALeqM5iAVcnV_Jed6S0pu_tX3S13Ah7bZgD94CRB7O2
英国在住の英国人の13歳の少女が、医師に勧められた心臓移植手術を拒否して、裁判によって尊厳死を得る権利を勝ち取ったと言う報道がBBCの夜のニュースで流れたのです。
この少女は、5歳のときに白血病を患い、抗がん剤による化学療法を受けました。
その結果、抗がん剤が心筋にダメージを与えたため、心移植が必要なほどの重度の心不全に陥ってしまっていたのです。
本人が、これを拒み、自宅で静かに過ごしたいと希望していたのです。
病院側が手術を受けさそうと裁判に訴えていたのですが、
1. 移植手術が100%成功すると云う保証はないこと。
2. 移植後は免疫抑制剤の使用を余儀なくされ、これにより白血病の再発率が上昇する事。
等の理由により、この少女が自宅にて余生を家族と静かに過ごす事を裁判所が認めたと言う訳です。

この少女がそのように考えるに至った気持ちも解らなくはありません。
まだ医師として仕事をしていたときに、白血病の患者さんの化学療法や骨髄移植を研修医と言う立場でしたが主治医としてお手伝いさせていただきました。
端で見ていてこれほどしんどい治療があるのであろうかと、自分が治療を受ける立場に置かれたら、治療を拒否したくなるのではないかと、良く思ったものでした。
こういった治療をくぐり抜けて、社会復帰を遂げられた方々は、もうそれだけで尊敬に値すると思ってます。
よく、あの治療を耐えて頑張り抜いたと。

この国では安楽死は認められていませんが、何がショックかというと、未成年の意思を尊重してこれを司法も親も受け入れて認めている点です。
日本では、未成年の意見は、取り入れてはもらえないでしょう。
しかし、13歳の少女が、自分の死を見つめなければならないとは、何とも残酷なはなしでやりきれません。
私たちは明日が来る事を前提で生きていますが、明日が来る事が前提でない方々がこのように厳然として存在する事に気付かされると、いかにその日を一所懸命に生きて、その日を無事に過ごせた事に感謝せねばならないか、という気持ちにさせられます。
いささか宗教じみて来てしまいました。
ターミナル・ケアとして扱うこの判断が正しい選択なのかどうか、人としても医師としても僕にはよくわかりません。
正解かどうかは、本人とそのご家族にしか最終的には解らないと思います。
この少女が静かに過ごすことが出来て、残り少ない人生を精一杯生き抜くことが出来る事をお祈りしたいと思います。

GR BLOG トラックバック企画「道」
に参加

テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2008/11/13(木) 08:00:00|
  2. 英国
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<スポーツ・パブ | ホーム | 硬水>>

コメント

日本でもニュースになっていました。
その女の子だけじゃなくてその家族の方も死を受け入れるというのは、私の想像を超える大変な葛藤などあったのではと思います、すごい辛かっただろうなぁ。。
またテレビで白血病の治療を何度かドキュメンタリーで見たことがあります。この治療って、私は受け入れられるんだろうかって思いました。
今こうやって明日が来ることを前提に生きていられる事に感謝しなくちゃ。
女の子が良かったと思える日常が続きますように。
  1. 2008/11/15(土) 03:24:53 |
  2. URL |
  3. kaotti1 #Yv0W3BDQ
  4. [ 編集]

コメント、ありがとうございます

当該の家族、おかあさんは看護師さんだそうですが、日本で見ていた医療の常識からすると驚くべき決定です。家族も相当葛藤したことでしょうね。
生きている私たちが、生きている事を大切にしないといけないですね。
  1. 2008/11/15(土) 13:54:07 |
  2. URL |
  3. Dr Ken #HfMzn2gY
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ukresearchlife.blog17.fc2.com/tb.php/126-c70eb15e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

当ブログの写真および記事とは直接関係がないと判断したコメントやトラックバックは、申し訳ありませんが削除させていただきます。ご了承ください。

カレンダー

01 | 2024/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 - -

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

最新トラックバック

カテゴリ

未分類 (337)
GRD2 (171)
日英の相違 (21)
英国 (282)
研究 (20)
映画 (4)
万年筆 (1)
医学 (10)
旅 (83)
科学技術政策 (2)
日本 (17)
Rolleiflex (25)
Leica (21)
Contax T2 (16)
Contax T3 (4)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード