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英国医学研究留学記

秋風邪

IMG_0714.jpg
Canon EOS M EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM Intelligence Auto (ISO1600, 30mm, f5.6, 1/160) , Dorking, Surrey, UK
ほぼ二週間ぶりの更新です。
油断していたら風邪をひいてしまいました。熱はないのですが、ここ数日鼻水と猛烈な体のだるさに悩まされています。なかなかすっきりと治ってくれないのは、加齢の影響かと......

前回の記事とかなり関係しますが、ハーバード大のDoug Melton教授のグループが、とうとうヒトのES細胞を使って大量にインシュリンを分泌する膵β細胞を作り出す事に成功したとの論文が、出たばかりのCell誌に掲載されていて、今朝のBBCニュースでも取り上げられていました。Melton教授は、僕が大学院生の時にはカエルを使った発生生物学では既に大御所としての名声を欲しいままにしておられましたが、ある時突然にカエルを使った実験系をすべて放棄し(と言う事は、今まで培ったexpertiseを一度すべて捨て去るに等しくて、普通の人にはそんなことは出来ません)、膵臓のインシュリンを分泌する細胞(β細胞)が如何にして出来上がるかの研究に方向転換をされました。その理由が、ご子息が1型糖尿病に罹患したからだそうで、今の彼の研究のモチベーションは、糖尿病をなんとかしたいという一心であろう事は疑い様が有りません。研究の方向性の大転換の後は、あっという間にこの分野のフロント・ランナーで、全くすごいというほか有りません。先日参加したworkshopでも、ヒトのES細胞やiPS細胞から作った膵β細胞の問題点は、インシュリン合成はしているものの、生理的なβ細胞で見られるはずの上昇したブドウ糖に対応してインシュリンを一斉に分泌する反応が無いことで、とても治療に使うにはほど遠いと議論されていましたので、Melton教授のグループは、モノの見事にこの問題を解決したことになります。となると、1型糖尿病は自己免疫疾患ですから、外から補充された膵β細胞もそのままだと結局は排除されてしまうので、その問題をどう克服するかの問題が残ります。インシュリンに依存するようになってしまった2型糖尿病の患者さんにとっては光明と云えるかも知れません。

とうとうエボラの死者が4000人を越え、しかもアフリカ国外で水平感染も確認されました。スペインの病院で、現地で罹患した神父さんを国内に連れて帰って治療を施したマドリードの病院にて、治療に加わっていた看護師さんが患者さんとの事で、改めて医療従事者はハイリスクである事を実感します。ただし、パニックが起きていないのは(病院でデモは起こったようですが)欧州らしいかなと。日本だとマスコミも大騒ぎして、豚インフルエンザの時のような集団ヒステリーのような様相になりそうなのが、日本の怖いところかなと感じます。

ノーベル賞は、物理学賞で日本人の受賞。前々からいつかは取るだろうと思っていた青色LEDでしたので、あまり驚きはなかったのですが、中村修二さんが米国籍なのにはちょっと驚きました。科学行政を担う方々と、企業の方々は、こういった頭脳流出については真剣に考えないと、日本の科学技術の未来はあまり明るく無いと感じます。政府筋から「日本の科学技術の高さを示した」的なコメントも、的外れかなと、なにせ、日本がイケイケだった頃の業績に対する受賞ですから、自分たちが現在行っている科学技術行政が正しいとのお墨付きには全くならないと思います。医学賞は、実はあまり僕にはなじみの無い分野で、研究者のお名前も受賞で初めて知りました。ここ十年ではそういう事はあまり記憶に有りません。化学賞が高解像度の顕微鏡なのはなんでかなと。物理学賞と化学賞、逆じゃないでしょうかと思ってしまいました。平和賞は、多分に政治的な香りがしますが、マララさんが受賞との報道には、納得。

ロンドンもすっかり秋らしくなってしまい、寒暖の差が激しく、体調には要注意です。

テーマ:雑記 - ジャンル:日記

  1. 2014/10/10(金) 19:28:27|
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Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

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