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英国医学研究留学記

心地よい春の日差し

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ここのところ、春爛漫な心地よい日差しの日々が続くロンドンです。
今日は20℃ほどまで気温が上がり、多分、今の大阪よりもずっと暖かくて春らしいのではないかと推察します。緯度は樺太と同じくらいなので、これは驚異的ですよね。明日の土曜日で冬時間も終了となり、日曜日からはとうとう夏時間へとシフトします。

天気が良いのは歓迎ですが、一方では記録的に雨が少なかったことがあって、EnglandとWalesは深刻な水不足に悩まされる可能性が高くなってきました。
South West Water says no summer hosepipe ban
ちょっと、水不足に関する今後の推移が心配です。

備忘録代わりに、この1週間を簡単に振り返っておきます。

まずは、小さな論文を書き始めました。といっても、研究上で必要に迫られて始めたすこし新しい方法論に関する技術に関する論文で、学術的なモノとはちょっと違います。ただ、これに使うデータの量が半端じゃないため、コンピューターが数時間かかかって計算しないと行けないものがあったりして、漸くデータの整理がほぼ終わり、文章を書き出し始めたところです。ポスドクの採用の前に論文を書く作業へ重きを置くと、実験が滞ってしまうのですが、気持ち的には早く書き上げて、次に移りたいと思っています。

念願のポスドクは、まずはBHFのグラントのポスドクの正式募集を月曜日から開始し始めました。たくさんの人が応募してくれて、その中にお眼鏡に叶ういい人が居ればいいなぁと期待しています。MRCの方は、採択の返事を3週間以上前にいただいたモノの、請求した研究費が妥当かどうかの別個の会議を通ってから、正式な採択のletter (Award Noticeと言います)が来ます。これが来ないと、activateへの手続きは全く進まないのですが、MRCからはあと2週間はかかると言ってきました。こちらも早くポスドクを募集して、出来るだけ早くに「全部一人で」やらないといけない状態から脱したいです。そうすれば、僕が書き物に専念していても、ポスドクが実験してくれますから、毎日の前進するスピードが速くなります。今の感じだと、 MRCの方のポスドク募集は5月以降になるのではないかなと言う気がします。

つまらないところで足踏みしていた実験も、トラブルシューティングが終わり、前へと進み始めました。ふたを開けてみると、実につまらない原因でうまくいっていないことが判明しました。自分の未熟さを少し嘆きましたが、うまく前に進めるようになった事を喜ぶことにしました。研究者は、常に自分を鼓舞しないと、前には進めません。

火曜日には、僕の母校の医学部の大先輩でいらっしゃる大津欣也教授と、大津研の日本人ポスドクT先生、うちのボス、うちのポスドクで大津先生のいらっしゃった内科出身のポスドクS先生、そして僕と5人で夕食を食べにいきました。大津教授は業績が認められ、ロンドンの超一流大学King's College University of Londonの循環器学の教授にこの1月に就任されました。また、同時に、BHFの教授にもなられました。僕はまだまだ駆け出しですが、お互いに良い影響を及ぼし合えて、「大阪人ここにあり!」と言うような存在感を示せたらなと希望しています。大津先生、今後もよろしくおねがい申し上げます。

BMedSciの学生君も、いよいよ佳境で、ぼちぼち大学へ提出する学位論文を書き始めないと行けません。イースターに2週間休むと言ってきたので、休む前にたたき台を書いてからバカンスへ出かけてくれと言っておきました。そうしないと、間に合わなくなるからです。本人には、「君のだから、ゼロから僕が書くことは出来ないからね」と念を押しておきました。まだしばらくは、学生君の相手で忙しいのが続きそうです。

昨日の木曜日は、午前中は僕の子供たちが通うprimary schoolで過ごしました。今週は、primary schoolがScience Weekというキャンペーンを行っていて、毎日、科学に力点を置いた学習を展開しています。1ヶ月以上前に、学校のscienceの先生から、子供たちにScience weekに現代医学に関して何かお話をしてほしいと頼まれたので、僕にとっても良い機会ですからOKしていました。持ち時間はひとクラス45分で、息子の居るYear 3と娘の居るYear 5の2クラス(一学年に、一クラスしか、うちの子供たちが通う学校にはありません)を担当しました。ほかに僕以外に2人の父兄が同じように頼まれていたそうで、そのうちの一人は、歯科医である息子の同級生の女の子のお母さんでした。だいたい3つのパートにわけてお話をしました。一つは、僕の専門である「小児科とは」、特に新生児の救急をやっていたので、小児科医達の努力で如何に新生児死亡率が減ってきたのかを紹介しました。いまは1000人あたりの死亡率はせいぜい4人ほどですが、100年前は5人に1人の新生児が亡くなっていた事を思うと、もちろん衛生の知識や食事、住環境と言った環境的要因の影響も大きいのですけど、産科と小児科を取り巻く技術の進歩と努力が果たした役割も大きいのです。2つ目のパートでは、お医者さんがどのように考えて診断をしているか、そしてその思考のプロセスは全く科学の世界に於ける論理的思考と全く同じであること、そして味覚以外の感覚を駆使して診察する具体的な例を麻疹などの病気をどうやって判断するかを例にとりながら説明しました。そして、最後に、基礎科学が臨床医学に如何に重要かと言う話をしました。例としては、まずは現在のImperial Collegeの医学部にいたSir Alexander Flemingによるペニシリンの発見の話をしました。自国民の偉大な発見は多分英国人の気分を高揚させるに違いないなと思ったのもありますが、何よりも抗生物質の歴史の始まりであり、20世紀最大の発見で、ある意味医学の勝利の一つでもあります。もう1例として、ワクチン一つの開発で如何に多くの命が救われるのかを、麻疹を例にして話をしました。ワクチン導入以前には、EnglandとWales合わせて毎年20万人以上の罹患者を出し、多い年では数百人の子供たちが亡くなっていた事実に、学校の先生の方が驚いていたようでした。最後に質疑応答もしましたが、なかなか良い質問をしますね、こどもたちは。「タバコはどうして良くないのか?」「歳を取ると怪我が治りにくくなるのはどうしてか」「癌になるとなぜ死んじゃうの?」といった質問がでて、解りやすく答えてあげるのに逆に大変な苦労を感じました。僕の語学力の無さをこういった点で痛感した次第です。最後に「僕の話を聞いて、お医者さんか科学者になりたいと思う人は手を挙げて」と聞くと、かなりたくさんの子供たちが手を挙げてくれました。まあ、社交辞令かもしれませんが(笑)、一人でも二人でも、僕の話にインスパイアされてくれたら、やって良かったなと思います。
primary schoolの庭の柳が新芽を吹いていて、きれいだったので写真に撮りました。この新芽のように、子供たちは初々しくて純粋でしたね。逆に、本業をがんばろうと言う気持ちにさせてもらいました。

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テーマ:雑記 - ジャンル:日記

  1. 2012/03/23(金) 16:32:53|
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プロフィール

Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

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