またもや今朝のBBC Breakfast(朝のニュース)での報道より。 UKでは、病院に入院した場合、平日よりも週末の方が若干(平日よりも1割)死亡率が高いとの報道。 Hospital patients 'more likely to die at weekends' 週末は、最少の人数で、しかも経験の少ない医療従事者が占める割合が多いからではないかとの推測です。 英国に於ける医師や看護士の働き方(勤務形態)をみると、正直、そりゃそうやろな~、と妙に納得です。日本じゃ、なにか院内で起これば、非番の先生はすぐに呼び出されますし、通常は呼び出された先生は旅行になどでかけていなければ快く応じますので、日本の病院では週末だからといって極端に結果がかわるとは思えませんが(必要ならば緊急手術もしますし)、日本は厚生省がこういうデータを出しているんでしょうか?僕は知識がなくて、知りません。
驚いたのは、各病院の死亡率を、病院間の地域差などを計算上補正して、リーグ・テーブルとしてプレミア・リーグの順位表のごとく公表している事です。しかも、ご丁寧に、予測される死亡率よりも「高かった病院(見かけ上問題のあると言えそうな病院)」と「低かった病院(標準よりも見かけ上は優れていると見える病院)」に色分けまでされています。 Hospital death rates: Full table これ、日本でやろうとすると様々な思惑が交錯して反対意見(もちろん、医師や病院運営者たちが一方的に反対するならば国民は「我が身かわいさのため」と思い納得できないでしょうけど)が噴出し、絶対にできそうな気がしませんが、医療の質を上げるためには、厚生省が音頭をとってこういう客観的データに基づく病院の評価をすべきな気がします。日本では、「医療に関しては素人と思わざるを得ない週刊誌レベルの取材に基づく病院ミシュラン本」が本屋にたくさん並んでいますが、現状とよく一致していて信用に足ると僕が納得した事は一度もありません。
今日もお産にまつわる話。 今朝のBBCの朝のニュース、BBC Breakfastでの報道。 英国において、自宅分娩は、病院での分娩に比べ、特に初産婦でリスクが高いとのこと。経産婦は大丈夫のようです。 Home birth 'carries higher risk' for first-time mothers 周産期医療に携わった経験があるものとしては、「あたりまえやん」と感じますが、自宅分娩を勧める人たちや団体は、病院とリスクは変わらないと主張していたので、British Medical Journalにきちんとした統計データで出てきて、このように報道に乗る事自体に意義があると感じます。
今朝のBBCニュースで、「妊婦が自由に帝王切開か正常分娩か希望して選べるようにする」ということが話題として報道され、個人的にはちょっと驚きました。 Women can choose Caesarean birth 帝王切開は、確かに大きな手術ではありませんし、母体や胎児を救うのに緊急で行うくらいですから、あるいみ母子に取って最も安全な「人の手で完全にコントロールされた」お産であるといえるかもしれません(産科の先生は違う意見かもしれませんので、あくまで赤ちゃんの蘇生のために、お産に立ち会っていた小児科/新生児科の医師の私見と考えてくださいね)。でも、もちろん手術ですから麻酔もいりますし、切開しないといけない訳で、そういう侵襲を伴う手技であるからには、きちんとした「適応条件」を満たす場合、つまり、母体、胎児、もしくはその双方の生命の危機を回避するに足る正当な理由がある場合にのみ、日本では行われます。これは至極常識的で全うなやり方だと思います。
今日は、たまたまラボに見学に来ている医学部の2年生の男の子が、僕と話をしたいというので、いろいろとおしゃべりをしながら実験をこなしています。将来は何になりたいの?と聞くと先天性心疾患を手がける小児心臓外科とか(これも奇特だねぇ、ある意味)。僕の専門は元々小児科というと、以前記事にしましたが、日本と同じく英国でも小児科は人気がないとのこと。一応、彼が小児科医を目指すようになると思いませんけど、小児科のやりがいについては語っておきました(だって、僕なりに小児科医としての意地やプライドのようなものもありますしね。なんでそんなのを選んだの?っていう視線は「矯正」しないと、笑)。 GR BLOG トラックバック企画「染」に参加
ひつつめは、1週間ほど前にBBCで報道されていた、英国で「癌」の診断にどれくらい時間がかかるのかに関わるニュースです。 NHS cancer diagnosis waiting times down, figures show National Health Service (NHS)では、2000年当時は、大腸癌と診断するのに平均96日(なんと3ヶ月ですぜ)かかっていたのが、ここ最近の平均日数が75日(それでも2ヶ月強ですぜ!)に短縮されたとのこと。2005年度から導入されている癌診断のためのNHSの戦略の成果だと、(僕にはやや誇らしげに聞こえる形で)報道されていました。日本でのデータを知りませんが(そもそも日本でそんな統計取っているのかどうかさえ知りませんが)、常識的に考えて日本でなら1ヶ月から1ヶ月半も有れば癌かどうかどころか病理診断まで白黒付いてしまうんじゃないかなと思うのですが、いかがなものでしょうか。ちなみに、乳癌、肺癌、胃癌などはあまり大きな改善はなかったそうです。結局、ここでの大きな問題の一つには、次に紹介するように、専門の医師と会うのがこの国の仕組みではとても時間がかかって難しいことに有るのだと思います。
次の紹介するニュースは本日の朝のBBC Breakfastで報道されていたネタです。 NHS: Crackdown on 'hidden waiting' ordered by ministers Englandの病院で(プライベート診療ではない)NHSベースの診療で、緊急性のない患者さんが病院で医師の診察を受けるための待ち時間は18週未満にすべしとのお達しが出ているのですが、実際には18週以上待たないと診てもらえない患者さんは推定で25万人!!は居るのではないかとのことです。NHSは、来年の4月までにこの数を5万人まで下げるように努力するそうです。 英国のNHSベースの診療は、全て無料です。ただしいろいろと制約が有って、まずはGP(診療所の家庭医。プライベート診療ではなくてNHSの診療を受け持つならば、国家公務員みたいなものですね。日本の開業医のような診療所を国が経営しているようなイメージを持ってもらうのが一番近いです)に診察を受け、GPが病院受診(つまり病院に勤務する専門医による診療)が必要と判断された場合に限り、病院(日本で云う所の入院施設のある市民病院などを含む総合病院)を紹介してもらって、初めて病院受診が可能になります。ここでの待ち時間とは、GPから診療の依頼があってから実際に患者さんが病院を受診するまでにかかった時間をさします。ちなみに、GPは投薬はしてくれますが、採血などの検査はGPではしませんし、日本の開業医のように診療所で点滴もしません。検査が必要な場合はGPが出してくれた検査箋を持って自分で最寄りの病院の検査部門に電話をかけて採決の予約をとり(だいたい数日から1週間くらい先でないと予約が入りません)、指定の時間にそこへ行って採血してもらいます(結果はGPへ送られるという訳です)。点滴は、入院施設のある病院ですべき処置との認識なのだそうです。
英国では、非喫煙者への健康被害を防ぐ目的で公共の場での喫煙は法で禁じられているために、パブやレストランなどでも喫煙は出来ません。 今日のニュースでは、さらに「自家用車の中での喫煙も禁止」しようという動きが出ています。 Ban smoking in cars, says British Medical Association 僕は煙草は吸いませんが、僕の認識では車の中は「プライベートな空間」なので、そこまでやると行き過ぎちゃうかと言う気もします。皆さんはどう思われるでしょう?
先日、ブログに書いた、Royal Brompton Hospitalの小児心臓外科のUnitが閉鎖されるかも知れないと云う記事の続報です(paediatric heart surgery 参照)。
一応、英国の高等法院のjudgeが出ました。NHSの一部がNHSの別部門を訴える形でしたが、高等法院はまずはRoyal Bromptonの小児心臓外科を閉鎖するという意思決定のプロセス、特に施設が医学の進歩や最先端の研究成果に対して十分に精通できるどうかの審査過程(Royal Bromptonはこの点が"poor"と判定されていました)が適切ではなかったと認めました。 Royal Brompton Hospital wins review into heart unit closure
一方で、Royal Brompton側の主張の多くが退けられています。 たとえば、Royal Brompton側が主張する以下の事、 1. 審査が始まる2010年度以前から、Evelina HospitalとGreat Ormond Street Hospitalを残すと云う決定が既にされていた。 2. 小児心臓外科を閉鎖すると集中治療上の技術が低下もしくは失われ、呼吸管理部門にも大きな影響が出る。 3. 審査側の委員の多くが、小児心臓外科が残されることになったEvelina HospitalとGreat Ormond Street Hospitalの出身である。 などは根拠が無いと云う事です。
Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。