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英国医学研究留学記

paediatric heart surgery

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今日は穏やかな秋の一日です。また、今年の夏時間の最後の日でもあります。
明日からは冬時間(世界標準時)に戻しますので、日本との時差は9時間(日本が早い)になります。

結局、風邪を引いた息子は熱が下がるのに少々もたつき、ハーフ・タームの今週は、妻はずっと家で看病するはめになりました。おかげさまでもう大丈夫なのですが、まだ本調子ではないので今日の日本人学校補習校はお休みさせました。娘にはとんだとばっちりで、買い物にも出かけられず、ずっと家で過ごすはめになり、ぶーぶー文句を言っています。症状からはインフルエンザかなとも思いましたが、外来で散見するとは聞いていますが、イングランドの感染症サーベイランス上はまだ流行期というにはほど遠い感じで、インフルエンザでは無かったのかも知れません。

つい最近、Facebookを始めました。といっても、なんとなくアカウントを作ったものの良くわかんないですし、スマホも持っていないので放置していたのですが、3週間ほど前に医学部の同級生が見つけてくれ、そのとたんにあっという間にいろんな人と繋がってしまい驚いてしまいました。そのFacebookには昨日載せた話題なのですが、ブログでも以下に取り上げてみようと思います。

現在のイングランド/ウェールズでは、小児の心臓の手術をこなす11のセンター病院が有ります。国/NHS(National Health Service)が各々の病院の技術などを査定して、手術すべき病院かどうかを定期的に審査しています。この結果、いまのところこの11の中で4つの病院で、小児の心臓の手術は禁止されることになりそうです。
Analysis: The debate over closing child heart surgery units
その閉鎖される小児心臓外科の有る病院の中では、何例か最近続けて手術でのトラブルの報告されたOxford大のOxford's John Radcliffe Hospitalが入っていて、この病院にはすでに国から手術をしないようストップがかかっていますが、おそらくはもう小児の心臓の手術はこの病院では今後出来ないでしょう。

このような査定をするようになった背景には、じつは1990年代にBristolであった、未熟な心臓外科医による手術で立て続けに子供たちが亡くなったスキャンダルが有り、この事件を契機に、一定の水準と成績の手術が常にこなせているのかどうかを第三者機関が常に監視をする体制になったのです。

今回、11から7つに小児心臓外科のセンターを減らすにあたり、ロンドンには今は3つの病院(King's Collegeの病院であるEvelina Hospital、UCLの病院である欧州最大の小児病院Great Ormond Street Hospital for Children、そしてImperial Collegeの病院であるRoyal Brompton Hospital)のセンターが有りますが、そのうち、驚いた事にRoyal Brompton Hospitalの小児心臓外科は閉鎖しようという事になっている事です。まあ、ロンドンに3つもセンターは要らないとだけ聞くと、そうかもなと思うかも知れませんが、この3つとも年間500例くらい手術をこなしている病院ですし、どれもが高い水準の技術を提供していて、しかもRoyal Brompton Hospitalには、前述のOxfordやBristolのようなトラブルはいささかも無い一流の病院なのです(もちろんEvelinaもGreat Ormond Streetにも問題は有りません)。どうも、僕の印象では、この背景には政府の歳出抑制政策を含むNHS側のコスト削減が背景に有るような気がします。で、最初に「ロンドンにあるセンターはもう2つにしてしまえ!」という結論がまずありきで、それで後はどこを閉鎖するかという政治的パワーゲームに負けてしまった、ということでしょうか。ちょっと調べただけですが、新聞記事にもどこにもコスト削減のためとの理由もどこにも記載が無くて、僕にはRoyal Brompton Hospitalを閉鎖しなければならない理由が良くわかりません。とうぜん、Royal Brompton Hospitalは全く納得していなくて、「政治的暴力だ」とどうやら訴訟にまで発展しているようです。
Royal Brompton Hospital child heart unit closure 'vandalism'

首都の病院ですし、欧州中からもプライベート診療が受けられやすい土地柄で、かつ英国内からもアクセスは有るでしょうから、技術が確かならば別にそのままで良いじゃないかという気がします。そんなことを言ったら、東京都に小児心臓外科のある病院、いったいいくつ有ります?(イッパイ有る!!)。日本人的感覚からして、もしこれが国庫の歳出削減のための策ならば、ずいぶんと思い切った(極端な)策やなぁと驚いてしまいます。これ、「阪大病院は今までは何も問題なかったけど、べつにそこで手術せんでもよそでこなす事で足りるから明日から手術は禁止です。」と突然に云われるのとほとんど同じですよね(ちなみに、Imperial Collegeって、世界の大学ランクでは常に東大よりもずっと遥か上をいく、超一流の大学なんです)。このブログを見てくださる心臓外科医、循環器小児科医、医学部の学生さんにも、是非に感想を聞いてみたい。日本じゃあり得ないですよね、こういう事は。逆に日本は手術している病院が多すぎるので、個々の病院のレベルをあげるために、もう少し手術すべき病院を国がコントロールすべきかなと思います。

この、英国での小児心臓血管外科にまつわる騒動、訴訟も含めてまた進展があれば、記事にしてみたいなと思います。

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いくつかアドバイス差し上げることは出来るかと思います。
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テーマ:雑記 - ジャンル:日記

  1. 2011/10/29(土) 14:06:44|
  2. 英国
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プロフィール

Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

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