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英国医学研究留学記

Research Excellence Framework

R0019246.jpg
GRD2 ISO400 f6.3 1/500s
うっかりISOが400のまま撮ってしまいました。この辺のずぼらさが、写真が上手にならない原因か。
今年の秋は、晴れ間が多いのは大変に喜ばしいのですが、いかんせん、今週に入ってから冷え込みが厳しいです。火曜日から気温が15℃以上に上がらず、朝は霜が降りていたりします。もう、大阪で云うと12月初旬に相当するような、そんな天気です。

今日は朝一番から研究所長さんと、マン・ツー・マンでミーティングでした。
どういうミーティングかと云うと、2014年度末に締め切りの、国が大学の評価を行うREF(Research Excellence Framework)に備えるためのミーティングでした。

まずはREFの説明から。英国(イングランド)の大学は全てが国立大学と云って差し支えないと思います。それは、HEFCE(Higher Education Funding Council for England)によって税金ベースの運営費が全ての大学に交付されるからです。ただし、この運営費、国が大学を評価し、その評価の高低で交付額が決まります。つまり、「評価が高いほど、大学は潤う」わけです。従って、運営側は、大学の評価をいかにして揚げるのかに死命を賭けていると云っても過言ではないでしょう。
この評価は数年に一度のペースで行われ、前回は2008年度に行われました。当時は労働党政権下で、RAE(The Research Assessment Exercise)と呼ばれ、我が大学は努力が奏効してこの評価で大躍進を遂げました。
政権が交代したこともあり、RAEという評価スキームは評価方法の変更も含めてREFへと変更され、2014年末までの各大学の達成度が査定され、結果は2015年度の春に発表されます。大学の運営側は、評価の仕組みを解析し、それに乗っ取って「如何に高得点をとるか」のゲームに勝つための方法を模索している訳です。

さてさて、今日のミーティングの目的は、大学の価値を上げるために、要するに「研究費をとる事と、論文(しかも国際的に競争力のあるもの)を書く事」について発破をかけるため、と端的に云ってしまえばそういう事でした。2014年度の締め切りに向け、我が大学ではREFの評価のための模擬演習をこの半年間行ってきていて、獲得した研究費およびここ数年に発表した論文のリストに因って、僕個人が外部評価委員にどのような評価であったのか、その結果を提示されて(共同研究の論文は有っても僕のオリジナルの論文が出ていないおかげで、「まあまあ」と云う評価でした。くそ~、いつか見てろ、って云う気になりますよね、笑)、得点を上げるためにはこれから2014年の年末までに僕が何をすべきかの話をしたのでした。僕の課題は、やはり早急に論文を出して行く事で、これはまったくもって「自覚しています」。もちろん、取れるだけの研究費も。各研究者個人の個々の得点が上がれば、総合力としての大学の得点が上がる訳で(もちろん評価は研究だけじゃなくて教育も有りますが、教育担当の人たちは別に居ますので、その人たちは教育上の評価をいかにして揚げるかの戦略を練って、末端に発破をかけているはず)、結果的にHEFCEからの大学の収入が増えればリストラの心配も少なくなり、皆がハッピーな訳です。競争的研究資金も、もちろん「間接経費」によって大学経理は潤いますが、新規採択率は不景気と保守党政権の緊縮財政が相まって20%前後に落ち込んでいますので、運営側が確実に当てに出来ない競争的研究資金の獲得を前提にしていないのは至極もっともな姿勢でしょうか。それでも、もちろんそういった研究費を獲得できそうなポテンシャルの科学者を「国籍を問わず」獲得することも、結果としてHEFCEも競争的研究資金も見込めるようになる訳で、奨励されている事の一つです。

英国の大学は、ある見方をすると国立大学でありながら、完全に「ビジネスとしての運営」に徹している感が強いです。こういうのは、行き過ぎると「教育を売るビジネス」の様になって、あまり好ましくない事も出てくるかもしれませんが、「大学が自らの価値を如何にして高めるか?」「国際的競争力を維持するにはどうすべきか?」に運営側が知恵を絞り末端にone by oneで発破までかける姿勢は、日本の国立大学には全く欠けている姿勢と思います(日本の大学の運営側はそんなことは無いと云うかも知れませんが、自分の母校(旧帝大)ですら今お世話になっている大学と比べて、歴然とした差が有りますから、日本でのはやっているうちに入らないでしょう)。国内および国際的競争力を高めるためならば、国籍や門閥を問わずに良い人は採用すると云う姿勢、今の日本の大学に有ります?日本の高等教育が高いレベルを維持、もしくは回復するためには、こういった「競争」の姿勢(しかも「国内」および「国際的」なもの、両方で)が一つの解決法かもしれません。
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テーマ:雑記 - ジャンル:日記

  1. 2011/10/20(木) 11:50:05|
  2. 英国
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プロフィール

Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

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