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英国医学研究留学記

不人気

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Rolleiflex 3.5F Xenotar 75mm f3.5 Fuji RXP (これ、実は千里中央です、笑)。
ポスドクS君(英国人)の送別会の記事で(「医学部卒後の進路」参照)、南ア出身の女の子とのおしゃべりの話を書きましたが、その子との会話で気になった話題をもう一点。それは、どうやら「英国でも小児科は医学部の学生には不人気の分野」であるという事でした。彼女も、小児科医にはなりたくないとのこと。
理由を聞くと、
1.子供は泣くばかりで、自分で何がしんどいのかを教えてくれない。
2.子供だけ診れば良いのじゃなくて、親も一緒にケアしないと行けないのが大変(親の言うクレームに耳を傾けるのは、やっていられない)。
3.忙しい(子供の医療は、大人と同じ事をする場合にも大人以上に手間ひまがかかる)。
とのこと。

驚いたのは、日本で小児科が不人気である理由と「ほぼ一緒」な事でした。この国で日本と違う点の一つは、例えば小児科や心臓外科といった専門を標榜できる専門医/認定医の数はコントロールされているために、競争の激しい分野へ行くと食い扶持がないかもしれない点です。となると、なりたくもなかったのに仕方なく小児科医になって嫌々子供を診ているケースがもしあるとしたらあまりよろしくない気もするのですが、一方では不人気でも数は担保されるような仕組みになっているとも考えられます。

学生さんが挙げた上記の3つは、確かにそうなのですけど、もしかすると日本の医学部の学生さんがこのブログを見る機会があるやも知れませんので、小児科医として若干の反論をしておこうと思います。

1.ですが、これは慣れれば解決できます。大人と比べて後天的な病気は少なく、しかもお年寄りのようにいくつもの疾患が重なって存在する事も少ないため、考えねばならない事はそんなにたくさんは実はないのです。しかも、子供を連れてきたお父さんかお母さん(普通はお母さんが子供を家で世話しているので、母親から情報を取る方が情報量は普通多いです)に話を丁寧に聞く事で、ほとんどの場合は何がしんどくて機嫌が悪いのかは判断できるようになりますので、全く心配はありません。成人を見る内科と大きく違う点は、成長に合わせて(年齢に合わせて)生理的な特徴などを考慮して考えねばならない点でしょうか。小児科医の本質は、「いかにして子供たちを本人のもちうる能力の限り大人にまで成長させてやるか」に有ると云えるでしょうか。

2.ですが、たしかに小さいお子さんの親御さんはまず若いので、礼儀を知らない無礼な振る舞いをする人も確かに大人を診ている場合よりも多いです。でも、親御さんと向き合わねば小児科医の仕事になりません。内科/外科は病気のご本人と基本的には意思の疎通がないと治療にならないのですが、小児科の場合は極論すると、親と上手く意思疎通がはかれるならば子供が嫌いでも小児科医として仕事をする事は可能です。実は、子供よりも親御さんと如何に上手くつきあえるかがずっと重要なのです。ここが保母さんと本質的に全く違う点でしょうか。僕自身も嫌な思いをした事はもちろんありますが(もちろん、反対に、僕が気づかない所で何気ない僕の一言で傷ついたご両親もおられる事と思いますが)、先方が「子供のために必死である」「医学的知識のない素人である」事が理解できれば、案外とひどいことを言われてもどこかで許せるモノです。高所からモノを云うのではなく、同じ目線である事が大事と感じます。親がうるさくいろんなことを言うからという話も学生さんの口から出ましたが、大人の患者さんでもうるさい人はいますし、大人が訴える不定愁訴はバリエーションが多いのですから、見方を変えれば一緒じゃないでしょうか。家庭医的な仕事も、子供と親の双方をケアすることになれている小児科医は向いていると思っています。

3.に関しては、反論の余地もありません。むしろ、子供は手間ひまがかかっている事を行政が認識していただきたい。小児麻酔や小児外科などで小児の特殊性が認められ診療報酬も高く設定されているのに、小児科では特殊性を認められないなどというのは、無知を通り越して小児科に対する差別にすら感じます。小児科は手間がかかるのに病院の儲けにはならない仕組みのため、こういう不採算部門には人的資源もあまり割いてもらえないケースが日本では多いと感じていました(忙しいのに小児科医の数を増やしてもらえないとか)。日本に於いて小児科医が必要以上に多忙な状況に追い込まれているのは、システムの問題に依る所が大きいのだと思います。英国ではどうなのか、英国の小児科医と話す機会がいまのところ無いので、何とも言えませんが。

子供は未来の労働力でもありますから、子供の医療に力を入れる事は、僕は国益にかなうと信じています(もちろん老人への医療をないがしろにしろとは言っていませんよ!)。NICU(新生児集中治療室)で働いていたときに、日常的に出生後に自力で呼吸を確立できなかった赤ちゃん達に蘇生を施していました。手を貸さなければ、そういう赤ちゃん達は多くが亡くなってしまったと思います。その子達が元気に大きくなってくれれば、きざな言い方ですが歴史を替えたのに等しい気がしませんか?小児科の医療は、やってみないと分からない魅力があると思います。ポリクリ(臨床実習)でちょっとかじったくらいで医学部の学生に「小児科は....」と何もかも分かったかのようには、正直、云われたくは有りません。←僕もかつては「ちょっとかじったくらいの学生」だったのですけどね.....、立場が変わると人間はずいぶんと勝手な事が云えるモノだと自分のことながら思いますが、これが今の本音です(笑)。
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テーマ:雑記 - ジャンル:日記

  1. 2011/04/13(水) 00:00:01|
  2. 英国
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プロフィール

Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

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