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英国医学研究留学記

エビデンス

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今日は朝から好い天気でした。家に帰る時も星が見えていて、一日中雲が空を覆い尽くさず俄雨も降らずというのは、ものすごく久しぶりな気がします。
週末に向けても、比較的よい天気が見込めそうです。

アフガニスタンへの3万人もの軍の追加派遣をして間もないのにも関わらず、オバマ大統領のノーベル平和賞の授与式が有ったとの報道。BBCはこの受賞に対しての是非については言及していませんが、反対派の動きやアフガン増兵の件にも触れながら、やはり授与の判断が早過ぎたのではないかとの疑問を投げかけている様に僕の目には映りました。

最近の英国での報道から、インフルエンザがらみについて気になった事を3点ほど。

一つは昨日の報道で、British Medical Journalにタミフルはインフルエンザに拠る合併症(主に肺炎)を防ぎ得ると言う従来からの見解は疑問だとの論文が掲載されたとの事。Rocheが主体となった報告では統計的有為差をもって合併症に対する予防効果があるとされていたのですが、専門科がそのデータを見直した所、データとしては不適切なものが含まれており、それを除いて解析し直すと有為差が無くなってしまうのだそうです。そうなると、タミフルの効果は通常は発熱期間がただ単に短くなるだけと言うことになってしまう訳ですが、入院が必要な重症例では予後に対して有為に良好な効果をもたらす事は疑いが無いそうです。更なる検討が必要でしょうが、これが本当ならば耐性を生み出す危険を冒してまで安易な投与はしない方が良いと言うことになります。

2点目は、英国で最近、新型インフルエンザのワクチン接種に関して、最優先者(医療従事者・妊婦・基礎疾患保持者)の接種が終了した段階で、次に6ヶ月以上5歳以下の小児に優先接種すると政府(NHS)が決定しました。ところが、GPが接種プログラムへの協力を拒否して、どのように接種を進めるのかが現在のところ暗礁に乗り上げています。NHSがBritish Medical Association(以下BMA; GPを取りまとめている組織。医師会みたいなもの)にGPで射つ様にと交渉していた訳ですが、BMAはGPに拠る接種を先日拒否したのです。理由は、冬のシーズンで風邪を含めてただでさえ患者が増えるシーズンなのに、忙しくてすべての子供たちへの接種を責任もって出来ない、と言う訳です。ニュースを見るに、僕が受けた印象は、「本来のGPの業務以外の雑用は押し付けられたくない」と言うように感じました。日本じゃ考えられませんね。日本じゃ「ボランティアの残業」なんて、当たり前でしたから(当然、残業の手当なんてどこからも出ません。つまりただ働きな訳です)。NHSは一人当たりの接種につきxx£の追加の給料を出すとインセンティブを持たせているのですが、それでも拒否ですから、日本と違って医師の労働環境は強固に護られている様です(個人的には、護られ過ぎと思いますが)。
結局、NHSは看護師(小児のワクチン接種はほとんどが看護師さんがやってくれます)か薬局(季節性インフルエンザのワクチン接種は、薬局で薬剤師さんも射ってくれますが、GPだと無料ですが、この場合は有料)での接種プログラムも視野に入れて模索中との事。

最後は、本日の報道ですが、新型インフルエンザの死亡率は、思っていた程高く無いとの報告が、British Medical Journalに掲載されたとの事。Englandにおける新型インフルエンザ患者における解析結果から、死亡率は0.026%だったとのことです。当初は0.2~0.4%にもなるのではないかとさえ言われていましたから、実際はずいぶんと低いようですね。先日発表になった米国CDCの解析結果でも0.018%と良く似た数字になっています。EnglandのChief Medical OfficerであるSir Liam Donaldsonは、だからといって英国政府の現在行っている新型インフルエンザに対する防疫プログラムは無益だと言う事にはならないと強調しています。日本人でも全く同じ死亡率かどうかは今の時点では何とも言えませんが、日本の「合併症が無いのに死亡した」という所だけを強調して不安を煽るような報道には、個人的にはうんざりしています。

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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2009/12/10(木) 22:51:37|
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プロフィール

Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

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