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英国医学研究留学記

安楽死

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今日は曇っていて冴えませんが、気温はやや高めで生暖かいです。天気予報では今夜からまとまった雨が降って、明日は晴れる予定。
家族がいなくて別に行くところも無いので、土曜日の今日も仕事をしています。

昨日触れた、もう一つの医療関係の報道について。

物騒なタイトルを書きましたが、安楽死にまつわるお話です。
英国では終末医療の対象となる患者さんの安楽死は法律で認められておりません。
それで、ある条件下では合法として認められている国(スイスのDignitas(NPO)クリニックなど)へ渡って、安楽死を受けるケースが言うほど多くはありませんが後を絶たないそうです。
この自殺幇助に依る安楽死の話題は、この一年ばかり良くニュースとして話題に上ります。

昨日の報道では、多発性硬化症と言う難病に冒されたDebbie Purdyさんという女性が、海外で自分が安楽死を遂げた場合、付き添いとして一緒に渡航した配偶者(つまり旦那さん)を自殺ほう助罪で検察が訴えるべきではないと、裁判に訴えていました。英国上院上訴委員会(日本の最高裁みたいなものらしい)は7月30日に、検察は訴追する場合の条件を明らかにしろと命じたのです。

この報道は、海外渡航に依る安楽死の法的な道を開いたのだと大きく報道されました。何故かと言うと、検察が訴追する条件をあらかじめ提示したとなると、その条件を満たさない形で行えば、残された家族は罪に問われる可能性がなくなるからです。現実問題として、英国人が渡航して安楽死を遂げたケースは何例もありますが、現在のところ家族が罪に問われたケースはいまのところ無いそうなのですが、死にたいと思っている人は、残された健常な家族が自分のために罪のとわれる可能性を排除しておきたいという事なのでしょう。

安楽死については、報道を見る限り、賛否両論で意見はまっぷたつと言う印象です。僕個人としても、どちらがいいのか、よくわかりません。なぜなら、現在の医学ではどうしようもない病気で、しかも患者さんに取っては誠に残酷な状況におかれてしまう病気はいくつも有るからです。自分自身がそういう状況下、例えば極論すると、四肢が動かせず見る事も聞く事も話すことも出来ないのに、精神活動だけは正常(このような状況は普通は起こりえませんが、理論的にはあり得るのです)だと言う状況下で生かし続けられること自体、僕には耐えられない気がするのです。かといって、生存して生産的な活動が出来るはずの人間が、自らの命を絶つ行為には、大いに反対です。

日本でも何回か事件化して安楽死に対する議論はありましたが、社会全体を巻き込んだ深い議論になるには至っていない気がします。英国では、しばらくは医療界や法曹界も含めて、この議論に正面から向き合わないといけない状況に陥りつつある印象ですが、おそらくはいくら議論を重ねても皆が合意できる結論には絶対に至ることは無いでしょうから、最終的には政治的判断にて決着が付けられるのだろうなと想像しています。
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テーマ:科学・医療・心理 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2009/08/01(土) 12:44:41|
  2. 英国
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プロフィール

Dr Ken

Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。

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