今週からPBL(Problem Based Learning)が始まりました。 このモデュールのチューターをするにあたり、専門分野以外の事は記憶があやふやなモノも多いし、昔に勉強した事が(小児科以外の知識は、学生時代から止まっているモノが多いので)もはや古すぎたりするので、もう一度キチンとおさらいして思い出す、もしくは最新の知識にキャッチアップしてから医学部の学生さんに接したいと思っているので、どうしてもセッションの前日には下準備が必要になりますし、セッションが終わるとその日の学生さんの示したパフォーマンスを評価しないといけないので、なかなか時間がとられます。しかも、僕が研究しているキャンパスからは地下鉄で20分ほどかかるキャンパスまで行かないといけません。そんな訳で、PBL以外にもいろいろとあって、このモデュールが終了する2月の第2週まではちょっとブログも距離を置かざるを得ません。
ここでPBLについて簡単に説明しておきます。 医学部の教育の形態は、えいやっと分けると、Lecture Based LearningとPBLに分けることが出来ます。 Lecture Based Learningは従来型の講義を中心とした教育で、日本の医学部(僕たちが受けてきた教育)で普通に行われているのはこの形態です。教官側からの一方通行的なものになるのが普通です(ここで、いやうちの大学はちゃんと双方向になっているぞと言った反論がある方もおられるかもしれませんが、一般論として聞いてください)。教える側としては、講義の準備と講義そのものに時間がとられるのですが、まあ一方的に伝えたい事をしゃべれば良い訳で、見ようによってはある意味気楽です。
一つは昨日の報道で、British Medical Journalにタミフルはインフルエンザに拠る合併症(主に肺炎)を防ぎ得ると言う従来からの見解は疑問だとの論文が掲載されたとの事。Rocheが主体となった報告では統計的有為差をもって合併症に対する予防効果があるとされていたのですが、専門科がそのデータを見直した所、データとしては不適切なものが含まれており、それを除いて解析し直すと有為差が無くなってしまうのだそうです。そうなると、タミフルの効果は通常は発熱期間がただ単に短くなるだけと言うことになってしまう訳ですが、入院が必要な重症例では予後に対して有為に良好な効果をもたらす事は疑いが無いそうです。更なる検討が必要でしょうが、これが本当ならば耐性を生み出す危険を冒してまで安易な投与はしない方が良いと言うことになります。
2点目は、英国で最近、新型インフルエンザのワクチン接種に関して、最優先者(医療従事者・妊婦・基礎疾患保持者)の接種が終了した段階で、次に6ヶ月以上5歳以下の小児に優先接種すると政府(NHS)が決定しました。ところが、GPが接種プログラムへの協力を拒否して、どのように接種を進めるのかが現在のところ暗礁に乗り上げています。NHSがBritish Medical Association(以下BMA; GPを取りまとめている組織。医師会みたいなもの)にGPで射つ様にと交渉していた訳ですが、BMAはGPに拠る接種を先日拒否したのです。理由は、冬のシーズンで風邪を含めてただでさえ患者が増えるシーズンなのに、忙しくてすべての子供たちへの接種を責任もって出来ない、と言う訳です。ニュースを見るに、僕が受けた印象は、「本来のGPの業務以外の雑用は押し付けられたくない」と言うように感じました。日本じゃ考えられませんね。日本じゃ「ボランティアの残業」なんて、当たり前でしたから(当然、残業の手当なんてどこからも出ません。つまりただ働きな訳です)。NHSは一人当たりの接種につきxx£の追加の給料を出すとインセンティブを持たせているのですが、それでも拒否ですから、日本と違って医師の労働環境は強固に護られている様です(個人的には、護られ過ぎと思いますが)。 結局、NHSは看護師(小児のワクチン接種はほとんどが看護師さんがやってくれます)か薬局(季節性インフルエンザのワクチン接種は、薬局で薬剤師さんも射ってくれますが、GPだと無料ですが、この場合は有料)での接種プログラムも視野に入れて模索中との事。
最後は、本日の報道ですが、新型インフルエンザの死亡率は、思っていた程高く無いとの報告が、British Medical Journalに掲載されたとの事。Englandにおける新型インフルエンザ患者における解析結果から、死亡率は0.026%だったとのことです。当初は0.2~0.4%にもなるのではないかとさえ言われていましたから、実際はずいぶんと低いようですね。先日発表になった米国CDCの解析結果でも0.018%と良く似た数字になっています。EnglandのChief Medical OfficerであるSir Liam Donaldsonは、だからといって英国政府の現在行っている新型インフルエンザに対する防疫プログラムは無益だと言う事にはならないと強調しています。日本人でも全く同じ死亡率かどうかは今の時点では何とも言えませんが、日本の「合併症が無いのに死亡した」という所だけを強調して不安を煽るような報道には、個人的にはうんざりしています。
昨日のプレミアは、Arsenalは快勝しました。2失点はちょっといただけませんが、Gunners達にとってはたまらない一戦だったのじゃないでしょうか。Chelsea対LiverpoolはChelseaに軍配が上がりました。4強にTottenhamが食い込んでいます。こことMan Cityぐらいががんばってくれると、面白くなって来ますね。F1 Japan GPはVettelがPole To Winでした。未だ判りませんが、Buttonがしぶとく1ポイント押さえましたので、こういうのが最終的に効いてくるかもしれません。中島選手は、ポイント獲得に至らず残念でした。
今週はノーベル賞の週で、本日はノーベル医学・生理学賞が発表されました。細胞核再プログラミングで、Gurdon & 山中が受賞........、とはなりませんでしたね。残念ながら全く違う話題、細胞の老化や癌化に関わるテロメア(Telomere)とTelomereを維持する酵素テロメラーゼ(Telomerase)の生物学が受賞の対象で、米国の3人の科学者(UCSFのDr Elizabeth H. Blackburn、Johns Hopkins University School of MedicineのDr Carol W. GreiderとHarvard Medical SchoolのDr Jack W. Szostak)が受賞しました。毎年の事ながら、なかなか周囲の予想と言うのは全く当てになりませんね~。Thomson Reutersの予想も当てになりません。
GR BLOG トラックバック企画「レタッチ」に参加 モノクロは必ずレタッチします。基本的には、Photoshopで横木安良夫氏の提唱する「CReCo」に沿って行います。諧調をレベル調整で白から黒まで幅が広くなるように調整し、イメージに近づけるべく、部分的に覆い焼きと焼き込みをします。で、最期にカラーバランスでハイライトにイエローを20%足します(バライタちっくにするため)。
Author:Dr Ken
元小児科医。ある日より、医師としてのキャリアではなく、研究者としてのキャリア・パスを志す。2007年の8月よりロンドンにある某大学医学部に講師として赴任。なかなか上達しない英語が、少し歯がゆい。万年筆と銀塩フィルムカメラが好き。縁があってやって来たこの国での貴重な体験や日々感じた事を、写真と一緒に記事にしています。